バンドと共に歩む博士研究生活

Interview No.78 唐 毅
生命理工学院

台湾出身の博士後期課程2年の唐毅(ターン・イー)と申します。主な趣味はドラム演奏で、断続的ではありますが10年以上にわたり続けてきました。来日後は学生サークル(東工大FSC)に参加し、バンド活動にも取り組んできました。また、日本の電車や鉄道にも興味があり、日常の楽しみの一つとなっています。

研究概要 / Research Outline

生物化学の分野には、「DNAからRNA、そしてタンパク質へと情報が伝達される」という生命の基本原理、いわゆるセントラルドグマが存在します。この原理を理解し、さらには生命現象を再現するためには、細胞外、すなわち無細胞系においてこのプロセスを構築することが重要であると考えられています。

 私の研究は合成生物学を基盤とし、分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)を原料として、無細胞環境下で複数のアミノ酸および核酸関連物質を合成することを目的としています。さらに、これらの生成物をタンパク質の転写・翻訳反応へと接続し、機能性分子の産生へとつなげることを目指しています。

これまでに研究チームでは、PLAを基質としてグルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)、アスパラギン(Asn)の4種のアミノ酸を合成する系や、メタノールからメチオニン(Met)およびS-アデノシルメチオニン(SAM)を生成する系が報告されています。これらはいずれも、生体内代謝を模倣した無細胞合成系の構築に向けた重要な成果であり、特にSAMはメチル化反応における主要な前駆体として知られています。

現在、私はPLAおよび葉酸を基質として、グルタミン酸(Glu)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、グリシン(Gly)、システイン(Cys)といったアミノ酸群に加え、5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-methyl-THF)の合成にも成功しています。このうち、後者はメチル化反応に関与する重要な前駆体であり、無細胞系におけるより高度な生化学反応の実現に貢献すると期待されます。

図1.これまでに得られた研究成果の概要

バンドと共に歩む博士研究生活

研究活動の合間に、気分転換やストレス解消の一環として、住居近くの楽器店でドラムを練習することがありました。日々研究に向き合う中で、次第に単なる趣味としてではなく、より主体的に音楽に関わってみたいという気持ちが芽生えていきました。そして、留学生活を送る中で、何か新しい挑戦をしてみたいという思いへとつながっていきました。

 昨年4月、現在所属している学生サークルに参加しました。それ以来、ドラムを担当しながら、さまざまなメンバーとバンドを組み、複数回ステージで演奏する機会に恵まれてきました。メンバーには日本人に加え、韓国や中国出身の学生、さらに東欧や中東からの留学生もおり、音楽を通じて交流を深めることができました。この期間を通じて、多様な背景を持つ仲間と共に一つのステージを作り上げる経験や、言語や文化の違いを越えて協力し合う経験を重ねてきました。こうした活動は、研究とは異なる形で自分の視野を広げると同時に、留学生活をより豊かなものにしてくれたと感じています。

初めてのサークルでの演奏は、6月中旬に開催された新入生ライブでした。共に演奏したメンバーには、入学したばかりの1年生から卒業を控えた4年生、就職活動に取り組む修士2年の学生まで、さまざまな立場の学生が含まれていました。また、楽器を始めたばかりの初心者から長年の経験を持つ演奏者まで、日本人に加え韓国や中国出身の学生もおり、多様な背景を持つメンバーとともにステージに立つ貴重な機会となりました。自身にとっては、バンドでの演奏は実に7年ぶりであり、緊張や不慣れさを感じながらも、久しぶりのステージに対する高揚感と、言葉にできないほどの感慨、そして胸の奥からこみ上げてくる思いを抱きながら臨みました。当日は指導教員の先生にもお声がけし、ご来場いただきましたが、演奏中にスネアドラムのスナッピーが切れてしまうという予期せぬトラブルが発生しました。しかし、これまで練習を重ねてきた対応力を活かし、片手で演奏を続けながら、もう一方の手で状況を確認・対処することで、演奏を途切れさせることなく最後までやり遂げることができました。

図2. 演奏直前、ドラムセットの位置から観客席を見た様子
(曲目:透明少女(NUMBER GIRL), 2025.06)

その後も定期的にサークルの演奏活動に参加し、音楽を通じて新たな人間関係を築くとともに、メンバーとの交流を深めてきました。また、学業との両立にも意識的に取り組み、自身のペースを保ちながら無理のない範囲で活動を続けることで、時間の使い方や生活のバランスの取り方について学ぶことができました。

図3. 演奏中のスティックトリックの一場面
(曲目:Ave Mujica(Ave Mujica), 2025.06)
図4. 演奏中にスティックを落とすトラブルが発生し、慌てながらも片手で演奏を続けつつ、もう一方の手で予備のスティックを取り出した一場面 (曲目:FIRE BIRD(Roselia), 2025.08)

昨年9月末、学生サークルが主催する長野県での合宿に参加しました。当時は研究が一定の成果を得た段階にあり、気分転換を兼ねて、これまでの実験結果の整理や研究報告の作成も行いました。4日間の合宿では、バーベキューや流しそうめん、線香花火に加え、3日間にわたるステージ演奏が行われ、私もバンドを組んで1曲を演奏しました。ある夜には、研究室選びや進路を考えている学部生と交流する機会があり、焼肉を囲みながら日本語で自分の研究や研究室について説明し、これまでの経験をもとに助言をすることができました。このような交流は非常に貴重で、印象深い経験となりました。

図5. 合宿での演奏の一場面で、印象的なサングラスを着用している様子
(曲目:イケナイ太陽(ORANGE RANGE), 2025.09)

メッセージ / Message

本学に来られる学生の皆さん、特に留学生の方々へ。せっかく海外に留学する機会を得たのであれば、研究や学業だけでなく、留学だからこそできることにもぜひ挑戦してみてください。異なる国籍や背景を持つ人々と出会い、共に何かに挑戦する経験は、貴重でかけがえのないものとなるはずです。学生として過ごす時間は一度きりですので、後悔のないよう、ぜひ自分なりに挑戦し、充実した日々を送ってください!